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theatre tokyo/creator’s park スペシャルインタビュー        

2012.08.25 up
theatre tokyo/creator’s park スペシャルインタビュー
       


Vol.1 奇才映像作家・竹清仁監督


text & photo : 本間順子 (creator’s park)

本日8月25日より、日本、韓国、香港、台湾、シンガポール、アジア5カ国同時公開の3DCG映画『放課後ミッドナイターズ』。
その公開に先立ち、web上の映画館theatre tokyoでもプレミアム試写会が開催された。
夜な夜な動き出す理科室の人体模型キュンストレーキ(声/山寺宏一)と、その相棒の骨格標本ゴス(声/田口浩正)を主人公に、大人顔負けのスーパー幼稚園児3人組と真夜中の学校で巻き起こる一夜の大騒動を描く。

本インタビューでは、世界3大ファンタスティック映画祭の代表格であるシッチェス国際ファンタスティック映画祭(スペイン)、インディペンデント映画祭であるレインダンス映画祭(イギリス)、厳選されたおかしく、エッジの効いた作品の集まるエトランジェ映画祭(フランス)などの国際映画祭への正式招待作品としての上映が決定されるなど、
その国籍不明の独創性が話題を呼んでいる、福岡を拠点に活動するモンブラン・ピクチャーズの奇才映像作家、竹清仁監督と初監督作品の魅力に迫ります。


みんな最初、理解の仕方がわからない。これは誰もまだ観たことがない新しいエンターテイメントになったな、と。

– 今回共同脚本に迎えられた『海猿』シリーズ原案の小森陽一さんも福岡在住ということですが、タッグを組まれたのは福岡つながりということですか?

はい。今回僕にとって初監督作品で、脚本はゼロからつくっていくものなので、ちゃんと脚本家の方と密にコミュニケーションを取りたかったんです。まずは福岡にいるひとってことで候補になって、元々知り合いだったんですが、仕事としては初めてで。相談したらやるやる!って言ってくださって。

– 主人公の人体模型キュンストレーキ(キュン様)と骨格標本ゴスと一緒に物語を展開させる女の子たちの設定が入学前の年齢でした。これまで一般的には学園物や学校の怪談的な映画やドラマでは小学校4年生くらいで設定されているものが多いかと思います。今回のこの年齢設定にはどういう狙いがあったのですか。

定石でいったら、そうなんです。しかも、普通だったら女の子たちの方が主役となるはずなんですよね。でも、この映画はあくまでもキュンストレーキの、人体模型の話にしたかったんです。小森さんともそういう話をして。もはや、ロジックの闘いではないんです、これって。メチャクチャな戦いだからモンスターな子どもの方がいいじゃないですか。何考えているかわからなくって。理屈じゃない子どもの方が主人公は翻弄されると思うんですよね。そういう意味でも、すごくおしゃまな、スーパー現代っ子っていうような立ち位置なんです、彼女たちは。悪役ですね、敵役なんです。キュンさまにとって、戦う、やっつけるべき対象なんです。


「あくまでもこの映画を人体模型の物語にしたかった。」 
©AFTER SCHOOL MIDNITERS PARTNERSHIP




– 主人公の人体模型キュンストレーキ(キュン様)は山寺宏一さんにご指名だったんですか?

そうです。アニメっぽくしたくなかったので、吹替の声優さんから選びたかったんです。海外の洋画の吹替版のDVDをたくさん観て、この声質のひとがいいなって、いくつか選んで後から調べたら、全部山寺さんだったんです。声、全部違うんですよ。全部違うひとだと思ったのに。すごくないですか?これはもう山寺さんしか、いないでしょう。ダメもとでお願いしてみて、ラッキーなことにOKを頂いたんです。

最初は受けてもらえない感じだったんですよ。人体模型のキャラクターのスチールだけをお見せしたら、「これはちょっと気持ち悪過ぎて、やれないなあ」って言われたんですけど、製作途中のムービーを観てもらったら、「やるやる!」って言ってもらえて。他の方も割とみんなそんな感じで承諾いただきました(笑)。
ゴス役の田口浩正さんも、福岡出身の方ですが、ムービーを見たら、やるやる!って。

だからみなさんもぜひ、動いている彼らを見てください!!!(笑)。

でも、これは「新しいもの」になったっていう証かなって思ってます。誰もまだ観たことのない新しいエンターテイメントになったっていうのは、すごく嬉しいことだなって。みんな最初、理解の仕方がわからないんですよ。観ているうちに、ああ、ああ、そういうことねって。

メッセージではなく、からっと楽しめるポップなエンターテイメント映画をつくりたい。

– 典型的な日本のアニメとの違いを明確にしていきたい、ということですが。

マンガもアニメーションも同じだと思うんですけど、キャラクターや絵柄が好きかどうかで、そもそも、観るかどうかがまず決まると思うんです。どんなにストーリーがおもしろそうでも、絵が嫌いだったら、もう観ないと思うんです。まず最初は、その絵がニッチな世界のもの。例えば萌え系とかではなく、アメリカの普通の高校生も観るような、もっとポップなものにしたかったんです。ポップなもの、というのが僕の中では割とキーワードで、マイケル・ジャクソンが「キング・オブ・ポップ」と言われているように、広く、なるべく多くの大衆に楽しんでもらえるものを目指しました。

– 短編の『放課後ミッドナイト』ではミスター・ビーンを、そして、今回の長編ではミュージカルの『シカゴ』やディスニー的な要素を意識されていたということですが。

一生懸命だったんですよね。あらゆる手をつかってこの映画をエンターテイメントにしようとしていました。その思い一心でした。だからミュージカルシーンもあるし、アクションもあるし、笑いもあるし、いろんな要素がゴチャっとなって、ちょっと整合性が取れなかったりとか、暴れてもいいから、サービス精神旺盛で、おもちゃ箱のようなんですけれどもね。ショーみたいな映画って言ってもいいかもしれない。そういうものをつくりたかったんです。そうすると、海外の作品としても、ある部分はわからないにしても、ここはおもしろい、っていう、楽しんでもらえるレイヤーがたくさんある、そういう感じでつくりました。

– 監督がこれまで影響を受けた映画、アニメーションとは?

アニメからも実写からも影響をたくさん受けています。今年45歳なんですが、僕の世代はちょうどハリウッド映画もすごいわーっと来た頃だったし、ジャッキー・チェンもすごい流行っていたりとか、本当に日本のものと、世界中のものが全部同じレベルで入ってきたときで、全部おもしろかったんですよ。

– このミックス感覚が今のクリエーションに全部つながっているのでしょうか?

そう思いますね。今回の作品もいろいろな要素を取り入れていますけど、バランスが取れているところがひとつ、おもしろさになればいいな、と思っています。たまたま一本目の作品がアニメーションの映画になりましたけど、完全に『スター・ウォーズ』なんですよ、この世界に入ったのは。その後、中学生のとき観たのが『バック・トゥー・ザ・フューチャー』とか『ゴースト・バスターズ』なんです。からっと観れる、メッセージとかでなく、からっと楽しめる映画がいっぱいあったんですよ。そういうのが大好きで。『ブルース・ブラザーズ』とかね。そういうトーンの映画って最近あまりないな、特に日本では。と思って3DCGアニメで映画をやってみたんです。

アニメと実写のハイブリッドがおもしろい—3DCGキャラクターの魅力

– 将来的には実写映画も?

チャンスがあれば。あるかもしれないですけど、これはこれで別のハードルがありますから、簡単にやります、とは言えないですけど。デザインの勉強をしていたので、アニメーションはデザインの要素をたくさんプラスに活かせるんですよね。キャラクターデザインとか、色の面とか。得意なことを活かせるという意味ではアニメが向いているんじゃないかと思いますけど、実写で影響を受けているので、3DCGという空間のあるものの方が、相性がよかったんですね。

3DCGというのは、半分実写にすごく近いんですよ、つくり方とか。二人の人体模型と骨格標本には、モーションキャプチャーを実際の役者さんにやってもらって。アニメをつくっているんですけど、役者さんと稽古をしっかりやったんです。このキャラクターはこんな性格だからこうは動かないよね、こうだよねっていうのをずーっとつくっていって、むしろ撮影のときはアドリブOK。キャラクターの理解さえできていれば、その場のグルーヴで変えてもいいよって。そうすると動きがイキイキしてくるんですよ。実写じゃないんで後からカメラも変更できるし。3DCGはアニメと実写のハイブリッドのようなところがおもしろいんです。

– 大きいスタジオとかで舞台稽古をしていたのですか?

公民館とかの鏡のあるスペースで、小劇場のひとたちのように、本当に演劇の稽古と同じようにやりました。おもしろかったですよ。その段階でキャラクターに肉付けされていったものがたくさんあるし。キャラクターの捉え方が変わりました。本当はもっと怒りっぽい、怒ってばかりの人体模型だったんですけれど、やっているうちに段々ファニーさが増えてきて、憎めない奴にどんどんなっていきました。山寺さんの声でさらにそうなっていったんですけど。

山寺さんのすごいところは、映画の中で人体模型がヘリウムを吸って声が高くなっちゃったり、スローモーションになってしまうシーンがあるんですけど、エフェクト(加工)なしなんですよ。全部地声です。録った後、みんなで拍手でした。

山寺さんと田口さんの掛け合いが、おもしろかったですね。山寺さんはつくってきて頂ける方で、アドリブばんばんって方ではないんです。しっかりと考えてこられるので、ちゃんとできあがっているんですね。田口さんは逆に実写のひとだから、山寺さんの芝居を現場で受けて、その場でやっているので、本当に仲がいい感じでそこにいるふたりという感じが出たと思うんです。それはすごくよかったなって思います。ただでさえ、あんな気持ち悪い奴らだから、好きになってもらう必要があるんで、そこが一番大事だったんですよ、演出上。憎めないっていうのは、声の力も、モーションキャプチャーの役者さんの力もものすごく大きくて。

海を超える、時間を超えるということ—3DCGの可能性

– クリエイターとしてつくりたいもの、伝えたいもの、と観る側が欲しているものがあって、その間にはギャップがもちろんあります。ビジネスとして成立させていくときに、ギリギリの交点で発信されていく、バランス感覚というか、大事にされていることは、どういうことでしょうか。

それを両立できる交点はものすごくだい狭いと思うんですけど、それを的確に見つけるバランス感覚を大事にしています。決してエゴになりすぎず、市場に迎合もし過ぎず、両立しているってことですね。本当にそこが大事だと思います。エンターテイメントなので。

– そのバランス感覚はどのように培われてきたのでしょうか。

映画は今回初監督なんですけど、これまでCMとか番組のオープニングやイベントの映像だったりとか、いろんな種類の仕事をしてきました。それは基本的には世の中に解決してほしい問題とか課題があって、それを表現というかたちで解決するという仕事です。ですから、日々、そういう鍛錬をしています。世の中のニーズに対して、表現でどう返すか、という仕事です。今まではオファーがあってはじめて考える、映画の場合はこちらから発していって。でも最終的にはニーズに合っている必要がある。アプローチは違うけれども、落としどころは一緒なんですよね。そういう意味では割とバランスが取れているんじゃないかな、取れているといいな、と思っています。

– 製作の始めの段階から世界へ照準を合わせて考えられていたのでしょうか。

アジア5カ国公開というのは、製作当初は決まっていなかったんです。ただ、最初から日本だけでしか通用しない映画にはしないように、海を越えて、世界中のひとがわかる映画にしようと思って製作しました。

日本人は割と器用だから、自分から理解しにいってくれる傾向があると思うんです。でも、世界的に観たら、そういう見方をしてくれることは、そんなにない気がするんです。あまりウェットにし過ぎているとか、マニアックになり過ぎているとかではなく、その点では意図的にちょっとライトにしたっていうところもあります。

日本だけでしか通じないネタ、例えば日本の時事ネタとかお笑いのネタとか、おもしろいものがいっぱいあったんですが、全部カットしました。笑いの中でも普遍的なお笑いにする。想像ですが、例えば中東の人が観てもわかるよね。というジャッジをその都度するという作業をしました。
世界中のひとが観るという前提に立った時には、これくらいならスルーされてもいいだろう、というざっくりとしたイメージなんですけど。キャラクターのデザインとかストーリーとか、小さなネタとか、すべてにおいて。

– 監督の考えるユニバーサルな共通言語とは?

ちょっと大袈裟にいうと、僕は「普遍的」ということかもしれないな、と。海を越えるけど、時間も越えるかもしれない、そういうイメージでつくっているんですね。希望というか。昔の映画って残るものって今でもおもしろいじゃないですか。そういう視点というのは、ちょっと日本のアニメにはないような気がするんですよね。おもちゃをたくさん売らないといけないとか、あるだろうし。もちろん例外はたくさんありますけれども。

-アニメでいう、海を越え、時間を超える普遍性という世界戦略は、他の分野、例えば実写映画、日本映画でも応用は可能なものなのでしょうか。

アニメだからできること、に僕は可能性を見出しています。アニメのキャラクターは、例えば中東で上映されると、中東人として観てくれるんですよ。日本人の役者さんが実写で演じていて、向こうで観ても、それは「日本人」なんです。キャラクターは吹替にするだけで、本当にそうなるんです。完全にはならないにしても、かなりの部分で受け入れられるようになる。ディズニーもそういった形で世界中で受け入れられているわけですけれども、ある程度記号なので、そういうふうになるんですよね。これは実写にはない、わかりやすいアドバンテージなんです。必ずマイナス面、プラス面持っていますけど、一番わかりやすい例です。決して、日本の実写映画が海を越えない、と言っているわけではなくて、わかりやすいアドバンテージという点で。

– アニメであることのマイナス面とは。

日本の観客は大人でもアニメーションを観てくれます。そういう文化になったんですよね。世界的にみると、それは特殊で、基本的に、大人は観ないです。特に2Dアニメは子どものものでしょ、って世界的には思われていて、そもそも観ないんです。けれども、ピクサーの映画とか3Dになると、半分実写っぽい感じになって、見立ての度合いが少ないからなんですけれど、これは不思議なことに大人も観るんです。これはマーケット的に証明されていて、可能性がある。2Dであると大人がそもそも観ないというデメリットがあって、3Dであれば、マイナススタートだけれども、プラスに持っていけるんじゃないかな、と思って今やっています。



福岡にある竹清仁監督のモンブラン・ピクチャーズには東京も含め全国から若手クリエイターは全国から集まってくるという。福岡はクリエイターがなぜか多く、デリケートなところでは、震災後移住してくるクリエイターも増えているそう。「ごはんもおいしいし、おネエさんはキレイ」な住みやすい都市とのこと。福岡発・米アカデミー賞作品となるか、今後も一層の期待が寄せられます。



『放課後ミッドナイターズ』(2012)
8月25日(土)、新宿バルト9ほか、日本、韓国、香港、台湾、シンガポール、アジア5カ国同時公開
配給:ティ・ジョイ 上映時間:1時間34分

「放課後ミッドナイターズ」公式サイト http://afterschool-midnighters.com/

ニコニコ動画公式チャンネル http://ch.nicovideo.jp/channel/after-school-midnighters



竹清 仁(たけきよ ひとし)監督

1967年 福岡生まれ
九州芸術工科大学(現:九州大学)画像設計学科 卒業
東映株式会社を経て1997年 空気モーショングラフィックス(現:空気株式会社)設立
TV番組オープニング映像やCF等をはじめ、MTVやスペースシャワーTVの番組パッケージ映像や福岡ソフトバンクホークスビジョン映像、TOYOTA CUPイベントオープニング映像など幅広いジャンルの映像を手がけている。
学生時代に制作したショートフィルム「BANANA」は現在ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵。オリジナル短編『放課後MIDNIGHT』は国内外で数多くの賞を受賞した。

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!