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theatre tokyo / creator's park スペシャルインタビュー

2012.11.06 up
theatre tokyo / creator’s park スペシャルインタビュー
       

Vol. 3 戦国エンタテインメントの新時代を切り拓く 脚本家・作家 和田竜さん

text/photo : 本間順子 (creator’s park)

本能寺の変から8年、1590年。戦国末期。天下統一を目前にした豊臣秀吉(市村正親)は、関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかで最後まで落ちなかった支城があった。現在の埼玉県行田市にあった、武州・忍城(おし・じょう)。周囲を湖で囲まれた「浮き城」の異名をもつ難攻不落の城である。「稀代の名将か?それともただの大馬鹿ものか?」 天下の豊臣軍2万人を敵に回した、忍城軍500人の総大将「のぼう様」こと成田長親(狂言師・野村萬斎)。民からでくのぼうと揶揄されつつも、愛される成田長親が、敵軍総大将・石田三成(上地雄輔)率いる大軍に包囲され、絶体絶命の時、民を守るため、打ち出したとんでもない奇策とは?!                

累計175万部を突破した大ベストセラーの映画『のぼうの城』が11月2日(金)より公開されました。その圧倒的なスケールゆえ、映画化実現まで8年の時間を要した待望の超大作に、『ゼロの焦点』の犬童一心監督と、『日本沈没』の樋口真嗣監督という異例の“ダブル監督”が、日本映画史を塗り替える壮大なスケールの大規模な合戦や、驚天動地の“水攻め”戦術、船上での田楽踊りなどの映画化に挑んだスペクタクル・エンタテインメント。

本が売れない、劇場動員が伸びない、という時代にあって、老若男女幅広い支持を集めている脚本家・作家の和田竜さんに、新しい戦国エンタテインメントの極意について、公開直前に伺ってまいりました。




戦国時代はヒーロー物の宝庫で、物語らしい物語の要素に富んでいる。

映画の脚本として『忍ぶの城』を書かれていたということですが、これまで影響を受けた映画、好きな映画などはありますか?

影響というと、いろいろありますが…ポイントとなるのは、まず映画が好きになった『ターミネーター』(1984)ですよね。学生のとき、芝居をやっていたんですけれど、脚本を意識するようになったのは、黒澤明の『椿三十郎』(1962)を観てから。好きな映画ですね。

『ターミネーター』と戦国時代の物語とはどのようにリンクしてくるのでしょうか?

そう、僕はアクション物、というか、人がダイナミックに動く映画が好きなんですよね。アクション物というと、ジャッキー・チェンみたいなのになってしまうのかもしれないけれど、そういうのではなくて、言ってみれば、暴力的なものが好きなんですよ。際立った人物が出てきて、それが活躍するというような。ヒーロー物とでも言えるのかな。『ターミネーター』も真逆のヒーローっていうことだし、『椿三十郎』も三十郎っていう際立った人物が活躍する。そういうものが好きなんですよね。その点、戦国時代の人間て、際立った人物たちのモデルとなるような人がいるわけなんですよ、いわゆる英雄豪傑というか。そういう人たちが乱立した時代だから言ってみれば、ヒーロー物の宝庫みたいなところがあるんですよね。

悪いやつは徹底的に悪いし、強いやつは徹底的に強い戦国時代

悪いやつは徹底的に悪いし、強いやつは徹底的に強い、というような際立った人物が非常に多いということと、それを観る方や読む方もその世界観をそんな風に思っているということですよね。隠れたポイントとしては。例えば現代物で2メートル近い十人力の男が出てきたら、ちょっと変だけど、戦国物って何となくそんなやついたかも?!(一同笑)という、どこかでそういう情報に触れたことがあるんですよね。だからそんなことができる、一種のファンタジーの世界というか、そんな面があるからですね。

だから昔から読むのは好きだったんですよね。でも時代物を書こう、とは思っていなくて、あくまでもヒーロー物、アクション物の現代物を書こうって思っていて、シナリオコンクールに応募していた時期も5年間くらいあったんです。当時は概ね、現代物の方が多かったんですよね。

脚本家の登竜門と言われる城戸賞を取ったときは、たまたま時代物だったのですか?

その前に僕の3作目の小説で『小太郎の左腕』というのがあるのですが、時代物としてはそれを初めて書いて、それの反応が良くて、最終選考に初めて残ったんですよね。自分がやりたいことと合ってるな、しっくりはまるな、という印象があって、だったらというので、その翌年にこの『のぼうの城』の元になった脚本『忍ぶの城』を書いたんですよ。ネタとしては随分前から持っていたので。


(C)2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ

以前は繊維業界の新聞社で記者をしていたとき、その当時から脚本を応募したり、歴史が好きだという話をしていたんですが、埼玉県行田市に住んでいる同僚が、地方に忍城という城があって、石田三成が水攻めをしたけれども負けなかったという話をしてくれたんです。
まず関ヶ原のビッグネームたちが、現在の埼玉県に攻めてきたというのが僕にとって新鮮だったんです。あと水攻めというのは秀吉もやっていたので、三成との関係にもつながってくるなあと思ってそこから関心を持ったんです。徐々にいろいろ調べ始めたんですが、いかにも物語らしい要素に富んでいる史実だなあと思いました。
大軍を寡兵で破るとか。合戦もあれば、水攻めもあり、最終的には小田原の本城の方が先に落ちてしまうという落ちまであって。物語のファクターが豊富だなあと思いました。

この『のぼうの城』は映画化まで8年間かかった中で、あきらめずに継続してこれた理由とは?

8年間あきらめなかったのは、僕ってよりも、久保田プロデューサーですよね。
僕はもう書き上げちゃったものをブラッシュアップする作業を8年間のうちにしまただけで、あきらめなかったのは久保田さんの方ですよ。 (笑)

では、賞を取るまでにあきらめなかったこと、継続してこれた理由というのはありましたか?

時々聞かれるんですけれども、自分でも何で続けていたんだろうという感じではあるんですよ。まあ、おもしろいことってやっぱり辞められないから、ということが一つ。
あとは、毎年1本か2本くらい脚本は書いていたんですが、その都度その都度やろうっていうことが違うから、同じ脚本を書くにしても年毎にトライすることが違って興味が尽きないことが積み重なっていった、それに従って年月も積み重なっていったというような感じですね。
もちろん、コンクールに落っこちちゃったりとかは、つらくはあるんですけれども、まあ翌年は理解されるかもしれない、とか思いながら、新たな着想があったら、それをカタチにしていく。楽しい作業ではあるので、それを積み重ねて行ったっていうことですね。

175万部大ヒットの理由は、物語のおもしろさと時代物には斬新なイラスト装画

ここまで大ヒットして、映画化も達成された理由とは?

自分で言うのもなんですけれど、まず、このお話がおもしろいからですよね(一同笑)。あとは、『のぼうの城』の表紙。こういうイラストを用いるというのが、当時としては画期的だったんですね。オノ・ナツメさんの絵です。従来の時代物とは違うな、という感覚をビジュアルではっきりさせたというのがまず大きかったのではないでしょうか。でもやっぱり中身が伴わないとどうしようもないから、ただ外身だけというのではだめだと思うから、というと自画自賛になってしまうのですが、、、(一同笑)

とっかかりはこの辺りで、その後は書店の人が読んでくれて、おもしろいってことで、これを推していきたいという声が上がったこと。本当に多かったらしいです。僕は初めて出した本だったから、比較対象がないのでわからなかったけれど、この反応はいいです、ということを小学館の担当編集者が言ってくれたりして。段々段々、読んでくれた人の口コミやら感想やらが増えていって、そこから読者がどんどん増えていった感じでした。
そういう意味では起点としては中身とこの表紙で。この『のぼうの城』が注目されてから、戦国物で版物のイラストを表紙とした単行本が一時期樹乱立したんですよ。歴史物の別ジャンルとして市場に捉えられてきているんだなという印象がありましたね。


装画 オノ・ナツメ 小学館より発売中。

その時代のことはその時代のこととして、その時代の気分で、その時代の理屈で書く。

今、私たちは現代生きていて、時代物という形で、ある時代の出来事を、いま、表現するにあたって、まず、その時代と自分を、何かリンクするものを感じて書かれると思うのですが、そういうときの接点というのは、今の社会に起こっていることにぶつけて考えられているのですか?

リンクさせないということが、実は僕の信条なんですね。その時代のことはその時代のこととして、その時代の気分で、その時代の理屈で書く、というのが、むしろ僕の手法ですよ。
もう我々現代人と感覚が違うんですね戦国時代のヒトは。その時代の史料なんかを読んでいると。やはり合戦で何個首を取ったとか、それが多い方が偉いという時代の人たちですから、まあ何しろ感情の起伏が激しいし、庶民まで暴力沙汰や残酷なことに割と平気な時代なんですよ。
それは我々の感覚とはちょっと違うから、そこに現代の感覚を持ち込んでしまうと、変に現代的になって寧ろ嘘っぽく見えたりするんですよね。たとえば、命の問題というのはその最たるものだと思うんだけど、昔の人は命を大切にとかは言わないんですよ。そういう呼吸の中で生きた人間というのが物語を繰り広げていく、ということに魅力を感じていているんです。

時代が違えば、今抱えている問題は大したことではないかもしれない。

それによって何を言おうとしているのかというと、我々は戦国時代から時を経るにつれて、気持ちの部分でどんどん洗練されていって、細々いろいろと気を遣えるようになっていった、と。それによって、神経が細やかになった分、抱える悩みは大きくなっているんじゃないかな、と思うわけなんですよ。
でも時代が違えば、そんな悩みはもしかしたらどうでもいいことかもしれない。読む人がああ、こんなに人間て、度外れても大丈夫なんだ、昔はそんな奴もいたんだ、みたいなことを実感することによって何か救われるというような効果があればなあって思っています。
それは必ずしも現代の感覚にその時代を寄り添わせることによって現れる効果ではなくて、丸っきり違うんだ、別世界がかつてはあったのだ、ということを示すことによってもたらされる効果かな、と。そんなことを考えています。

今構想されている新しいストーリーや取り組まれているものなどについてお願いします。

今は『週刊新潮』で『村上海賊の娘』という海賊物を書いています。今それに集中しています。2年近く連載をやっていて、ようやくクライマックスになるというところで、今、ヘトヘトの状態です。。。次の映画は『のぼうの城』の結果次第ですね。



和田 竜(わだ りょう)さん

1969年、大阪府生まれ。2003年、映画脚本『忍ぶの城』で第29回城戸賞を受賞。同作を小説化した『のぼうの城』(小学館刊)で2007年に作家デビュー。同作はベストセラーとなり、第139回直木賞ノミネート、2009年本屋大賞2位を受賞。小説第2作目『忍びの国』(新潮社刊)で第30回吉川英治文学新人賞候補、第3作目『小太郎の左腕』(小学館刊)で第23回山本周五郎賞候補となる。






野村萬斎    榮倉奈々 成宮寛貴 山口智充 ・ 上地雄輔 山田孝之 平岳大
西村雅彦 平泉成 夏八木勲 中原丈雄 鈴木保奈美 ・ 前田吟 中尾明慶
尾野真千子 芦田愛菜/市村正親/佐藤浩市
監督:犬童一心 樋口真嗣   脚本:和田竜 小学館「のぼうの城」   
音楽:上野耕路
主題歌:エレファントカシマシ 「ズレてる方がいい」(ユニバーサル シグマ)
制作:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース エンタテインメント/製作:『のぼうの城』フィルムパートナーズ/配給:東宝、アスミック・エース 




『のぼうの城』
全国大ヒット上映中!
配給:東宝、アスミック・エース
公式サイト:http://nobou-movie.jp/
facebook:http://www.facebook.com/nobousama
twitter:https://twitter.com/nobou_movie
(C)2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!