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イベントリポート:第9回文化庁映画週間シンポジウム「MOVIE CAMPUS—クラウドファンディングは本当に映画を救うのか?—」

2012.11.15 up
イベントリポート:第9回文化庁映画週間シンポジウム「MOVIE CAMPUS—クラウドファンディングは本当に映画を救うのか?—」
       

世界中のインディペンデント映画のクリエイターたちが苦労している資金調達において、現在新しい資金調達のプラットフォームとして注目されている、インターネットを活用し、少額寄付から不特定多数のサポーターを募るクラウドファンディング。
第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」作品賞を受賞した土屋豊監督の『タリウム少女の毒殺日記』配給宣伝の200万円をmotion galleryのクラウドファンディングで挑戦中ということで話題を呼んでいます。

東京国際映画祭期間中の10月26日、六本木アカデミーヒルズ49 タワーホールにて、
第9回文化庁映画週間のシンポジウム「MOVIE CAMPUS—クラウドファンディングは本当に映画を救うのか?—」が開催されました。

クラウドファンディングの現状と課題について、関口 裕子氏(ジャーナリスト/株式会社アヴァンティ・プラス代表取締役)をモデレーターに迎え、前半では映画市場におけるマーケティングについて、梅津 文(GEM Partners株式会社代表取締役)からの報告とともに、実際にクラウドファンディングを活用されている佐々木 芽生監督(ドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー』、続編『ハーブ&ドロシー 50×50』[原題])カート・ヴォス監督(第25回東京国際映画祭WORLD CINEMA部門にて『ストラッター』上映)からの報告がありました。後半では、クラウドファンディングのプラットフォームサイト「motion gallery(モーションギャラリー)」を主宰する大高健志氏数々のヒット作品を製作されてきた映画プロデューサーの小川真司氏(株式会社ブリッジヘッド代表取締役)も登壇され、クラウドファンディングの今後の展開についてディスカッションがなされました。


第9回文化庁映画週間のシンポジウム「MOVIE CAMPUS—クラウドファンディングは本当に映画を救うのか?—」(C)2012 TIFF
左より関口氏、佐々木監督、小川プロデューサー、大高氏、梅津氏




映画ファンのニーズとどのようにマッチングさせるか

梅津 文(GEM Partners株式会社代表取締役)からの報告◆

梅津氏による映画市場におけるインターネット調査によれば、クラウドファンディングはコンセプト、プラットフォームともにまだ認知度が低く、観客の多くは映画についてTVや劇場の予告編で知る機会がインターネットの情報よりも依然として上回っている。ニーズのある事業者と映画ファンのニーズのマッチングの難しさがある、などが現在のハードルとなっている。

作品の支援には作品の持つ認知度がドライバーとなってくる。フランスでも『パイレーツ・オブ・カリビアン』がプロモーションイベントの費用を集めるなど、映画の宣伝費を集めるマイクロ投資のプラットフォームがあり、興行成績に応じてリターンがある仕組があるという。

気の利いた、プロジェクトならではのユニークなギフトを

佐々木 芽生監督 (C)2012 TIFF

◆佐々木芽生監督からの報告◆
郵便局員と図書館勤めの夫婦が、つましい給料からアート作品を買い集め、やがて世界屈指の現代アートのコレクターに…そして最後は全てをアメリカの国立美術館に寄贈するという『ハーブ&ドロシー』(2008)。この初監督作品で、製作にこれほど資金が必要ということをつくりながら知りました。
配給会社が見つからず、自主配給をすることになったが、広告を一切出さずとも、SNSによる口コミを中心に東京渋谷のシアターイメージフォーラムで歴代2位の興行収入を記録しています。続編の『ハーブ&ドロシー 50×50』(原題)は夫妻がコレクションをナショナル・ギャラリーに寄贈しようとするがあまりにも膨大なコレクションなので、全米50州に50作品を寄贈するプロジェクトを記録したものです。一本目は助成金とPBS放送による制作でしたが、パート2というのはなかなかスポンサーを見つけるのは難しいものです。

少額からの寄付で多くの人にサポートしてもらうというクラウドファンディングの仕組は、ハーブ&ドロシー夫妻のアートコレクションとも重なるところがあり、クラウドファンディングに挑戦しました。アメリカのキックスターターは目標金額を達成しなければ、all or nothingとなる仕組なので戦略に基づいた、用意周到な準備が必要です。

・専任スタッフによる体制づくり
・クラウドファンディングのページセットアップ
・プロジェクトならではの気の利いたギフトの用意

寄付だけではなく、一緒に宣伝をするチームの一員として参加してほしいという思いがあり、SNS、ニュースレター、ブログ更新だけではなく、サポーターへのお礼状など密なコミュニケーションが重要と考えました。ファンディング募集期間である60日間は他のことは何もできませんでした。

ギフトにはドロシー本人からのメールや、関連するアーティストやギャラリーとコラボレーションしたノベルティを製作するなど、このプロジェクトならではの気の利いたギフトを用意しました。
残り15日でも目標金額まで2万5,000ドル不足しており、日本人向けに個人メールで告知。ある日本企業の社長が個人で2万ドル寄付してくれました。クラウドファンディングは開始当初と最後の1週間から10日のコミュニケーションが重要です。
目標金額5万5千ドルで最終730名から約8万7千ドルの寄付が集まりました。日本からは109名4万ドル弱が集まりました。

現在日本の登壇者大高氏の主宰するクラウドファンディングサイト、motion galleryで、日本での史上最高金額1,000万円を目標金額に、ドロシー渡航費も含め、製作費、宣伝・配給費用のサポーターを募集している。ハーブが亡くなり、ドロシー一人となってしまったが、高額寄付には監督とドロシーのティーチ・イン付プライベート上映会などがギフトとなっている。

一般のサポーターからの支援を可視化することによって、企業も支援したくなるような宣伝の在り方として

◆大高健志氏(「motion gallery」主宰)からの報告◆

大高氏は自身も大学院で映画製作を学んでおり、作り手の実情を踏まえ、映画の製作や配給を活性化させていきたいということから、既存の資金調達とは違うファンディングのシステムとして映画やアート分野にフォーカスしたmotion galleryをつくられた。

イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督は日仏共同制作の『LIKE SOMEONE IN LOVE』の総製作費2億円のうち、日本での1億円調達の中の562万円をここで調達したことは、一般のサポーターからの支援を可視化することによって、企業も支援をしたくなるような宣伝となる在り方を提示できた好事例となった。

通常は公開直前からSNSではつぶやきが始まって、観客が観たいと思っていても、ライフスタイルで公開スケジュールに間に合わないまま、劇場動員につながらない残念なケースもある。クラウドファンディングを利用している場合、大分前のタイミングから映画の存在を告知できるという利点がある。

佐々木監督の1,000万円という目標設定は、高額のように思われるかもしれないが、いずれはここで製作費全体をまかなえるように成長させていきたいという。

ハリウッド作品も予算の一部を確保するために参入してきて、低予算の映画にとって大きなチャレンジとなってきている

第25回東京国際映画祭WORLD CINEMA部門で上映された『ストラッター』は、カート・ヴォス監督とアリソン・アンダース監督『ボーダー・レディオ』(87)“Sugar Town”(99)に続く、南カリフォルニア3部作の最終章となる作品で、製作費すべてをクラウドファンディングから調達し、話題を呼んでいる。

カート・ヴォス監督 (C)2012 TIFF

◆カート・ヴォス監督からの報告◆
アリソン・アンダース監督と25年一緒に仕事をしてきて、また一緒に映画をつくろうということになり、モノクロの音楽映画で、スターもなく、脚本を書くことに特に関心が強かったので、資金調達では、キックスターターでクラウドファンディングもしようということに決まりました。映画製作において、資金の工面は最重要事項ではないというコンセプトが私たちにはありました。佐々木監督と違い、私たちにはクラウドファンディング専任のスタッフはいなかったので、アリソン監督と二人でかなりプロモーションに関わりました。

約200万円の製作費を募るというのは大きなチャレンジでしたが、ギフトがユニークで、高額支援者には、コーエン兄弟やクエンティン・タランティーノ監督からの非常に価値あるギフトの提供がありました
ギフトは寄付に対するサービスとして考えているので、コスト等のことも含め、DVDはギフトにしない方がいいと思っています。

実はハリウッドの作品もキックスターターで予算の一部を確保しようとする状況が生まれてきており、その中で低予算の作品やドキュメンタリーが競争をしないといけない、という非常に大きなチャレンジとなってきました。そこで、映画から2、3分の長さでティザー用ムービーを用意することで、少しでもサポーターの心を動かすことが重要になってきます。フェイスブックで更新を続けていくことはプロモーションに不可欠です。

サポーターをフォローアップしたり、マネージメントしてくれる機関が必要なのでは

◆小川真司氏(映画プロデューサー、株式会社ブリッジヘッド代表取締役)より◆

今夏退社されるまで25年間アスミックエースで数々のヒット作を製作してきた小川氏によれば、商業映画とインディペンデント映画は性格が異なっている。1000万円単位で集まらないと効率が悪い。1億円から2億円の総製作費のうちの20%でもクラウドファンディングから集められれば、商業映画もバリエーションが広がっていくのではないかということだ。

司会の関口氏よりBtoBの資金調達からBtoCへの資金調達への変換での問題点について求められ、次のように答えられた。
開発費に資金が必要となるのに、往々に手弁当になっている。支援者が企画に参加していく運動型のアプローチは公開時のプロモ―ションとして有効だが、製作者が一人でするのは大変なので、サポーターをフォローアップしたり、マネージメントしてくれる機関が必要なのではないか。寄付というのは何等かの期待と交換するものなので、チケットを購入して終わりという流れではない。支援者へのフォローアップが必要となってくる。

市場原理の中で映画を救うのは、やはり製作者の努力とサポーターの存在

「クラウドファンディングは映画にとって救いになるのか?」という会場からの質問に、登壇者が次のように応えてシンポジウムは終了しました。

佐々木監督:
お金も大事だが、そこに集まってくれるサポーターの存在をケアできるかにかかっている。

小川氏:
クラウドファンディングが完全に普及したらそこでも市場原理が発生してくる。参加する送り手の努力次第で映画を盛り上げられるかが決まる。

大高氏:
クラウドファンディングのプラットフォームができたばかり。マーケット原理が働く中で映画を楽しむひとのコミュニティづくりをしていきたい。

梅津氏:
映画を救えるのは製作者とファンだけだと思う。利用価値はあるが、映画が支援の対象なのか、というのは疑問に思っている。

  

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!