CP -ONLINE REPORT MEDIA from TOKYO・CREATORS PARK- 東京・クリエイターズパーク

  • YouTube
  • facebook
  • twitter
  • RSS
TOP | NEWS

ウクライナ発、全篇手話のみの映画『ザ・トライブ』

2015.04.15 up
ウクライナ発、全篇手話のみの映画『ザ・トライブ』
       

映画の言語は全篇手話のみ。
登場人物の台詞=手話の意味を説明する字幕も吹き替えもない。

ウクライナの新人監督ミロスラヴ・スラボシュビツキーが2014年カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリ等3冠を初めとして各国映画祭で多数受賞した長篇デビュー作が、いよいよ今週末4月18日(土)より公開される。

すべての登場人物がろうあ者で、プロフェッショナルの俳優はいない。その多くが恵まれない家庭で育ったストリートキッズ。撮影は、ウクライナのヤヌコビッチ政権に対する反政府デモの前に始まり、ロシアによるクリミア支配の後に終え、役者やスタッフの何人かは、空き時間に反政府デモなどに参加するなど、緊迫した状況の中で行なわれていた。

スラボシュビツキー監督は、『動くな、死ね、甦れ!』(89)のヴィターリー・カネフスキー、『フルスタリョフ、車を!』(98)のアレクセイ・ゲルマンといった天才監督を排出したレンフィルム・スタジオ出身。本作品は、ろう学校を舞台にはじめて実験的に言葉のない映画に挑戦した短編「Deafness」に続いて、サイレント映画へのオマージュとしてつくられた。声や音楽が一切排される中、手話なんてわからないと思う隙もなく、ドキュメンタリー作家として自らも活動するヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチが手がける臨場感あふれるカメラワークで登場人物たちの全身の演技に観る者は引き込まれていく。

閉鎖的な全寮制のろう学校での放課後の世界は、犯罪や売春などを行なうグループ〈トライブ(族)〉によって支配されていた。入学したばかりのセルゲイもカネと力が物を言う弱肉強食の世界でのサバイバルを迫られる。トライブのリーダーの女アナは同室の女と組織の主要な財源となっている売春を、長距離トラックの運転手を相手に夜な夜な行なっていた。ウクライナからイタリアへ脱出するのを夢見て。ある日、組織のタブーを破り、アナを自分だけのものにしたいというセルゲイの純粋で絶望的な衝動が暴走する。

愛憎そして、目や耳を覆いたくなるような痛み、バイオレンス…。若さゆえにぶつかり合うエモーション。ノイズから一転してゾッとするような無音の瞬間。

映画という表現の、そしてわたしたちの感性の際限なき可能性に身を委ねてみてほしい。ろうあ者の世界への先入観は裏切られ、心身がえぐられるようなスピード感あふれる怒濤の132分がそこにある。



映画『ザ・トライブ』(英語題:The Tribe)

監督・脚本:ミロスラヴ・スラボシュビツキー
主演:グリゴリー・フェセンコ/ヤナ・ノヴィコヴァ
製作・撮影・編集:ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ
2014年/ウクライナ/132分/HD/カラー/1:2.39/字幕なし・手話のみ
© GARMATA FILM PRODUCTION LLC, 2014 © UKRAINIAN STATE FILM AGENCY, 2014
配給:彩プロ/ミモザフィルムズ
公式ウェブサイト:www.thetribe.jp

4月18日(土)よりユーロスペース、新宿シネマカリテほか 全国順次ロードショー

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!