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アート×テクノロジーの先に見える人間の生と死 映画『さようなら』

2015.11.16 up
m_sayounara
       

原発が同時多発テロに遭い、放射能に全土が汚染されている近未来の日本。
国民は避難優先順位によって国外へと避難していく。
津波によるリスクを避けるために、湖岸につくられた原発のある街で、
病弱なターニャ(ブライアリー・ロング)は幼い頃からともに暮らしてきたアンドロイドのレオナ(ジェミノイドF)の眼差しのもと、
最期の時を迎える。
ターニャはアパルトヘイト後の南アフリカから来た難民。前科のある者と同様に国外避難の優先順位は低いのだった。
そのような状況での離婚経験のある友人佐野(村田牧子)や実家に戻っていた在日韓国人の恋人敏志(新井浩文)の選択は……。

劇団・青年団を主宰する劇作家・平田オリザとロボット研究の第一人者である大阪大学大学院の石黒浩教授が2007年より進めてきたロボット演劇プロジェクト。2010年に世界で初めて人間俳優とロボットが共演した20分のアンドロイド演劇「さようなら」。そこに漂う濃密な「死の匂い」に惹きつけられた深田晃司監督が同舞台を初演より演じてきたブライアリー・ロングとともに112分の長編として完全映画化。

日本人でエリック・ロメールのような映画を撮りたいとの思いから、青年団の演出部に所属し、内外の俳優とともに、『東京人間喜劇』や『歓待』など、人間の孤独やおかしみからシニカルな笑いを誘う映画を企画、製作し、国内外で大きな評価を得てきた深田監督。

前作『ほとりの朔子』で描かれた二階堂ふみ演じる浪人生・朔子の、湖のほとりでのひと夏の物語の後で、本作『さようなら』のターニャは晩秋の風景が広がるディストピアの窓辺に横たわる。傍らにいるレオナは、アンドロイドゆえに死を知らず、死ぬこともない。息を呑むほどに美しく孤独な光の戯れの中で衰えゆくターニャとは対照的に、これから結婚する木田(木引優子)と向かう海外での未来に希望あふれる山下(村上虹郎)がやはり湖のほとりでまぶしくもある。

フランツ・カフカの『変身』を原作とした平田オリザの舞台「アンドロイド版『変身』」に出演していたイレーヌ・ジャコブ、ジェローム・キルシャー夫妻がターニャの両親として特別出演している様は、深田監督のこれまでの作品でなじみ深いオノレ・ド・バルザックの『人間喜劇』のよう。

東京国際映画祭での上映後のQ&Aで、アンドロイドとの共演で一番印象に残ったのは、レオナが「感情や美しいと思う気持ちはターニャから学んだ」と言われ、「自分が会話をしていたのは、結局のところ自分自身であった」という孤独をターニャが感じたシーンだというブライアリー・ロング。「人間の感情や心、考えたり、経験していること、つまり’生きる’ということが一体何を意味しているのか、言葉では正確に表現できない。それを知りたくてアンドロイドの研究を続けている」という石黒教授。

誰かとともにあろうとするエゴを捨てるのは、他者への寛容なのだろうか、生きることへの諦めなのだろうか。
わたしたちがディストピアから逃れる光を手にする鍵は、アンドロイドが物語るように、やはりダイアローグの中にあるのかもしれない。




『さようなら』


企画・脚本・監督:深田晃司(『歓待』『ほとりの朔子』)
原作:平田オリザ アンドロイドアドバイザー:石黒浩
出演:ブライアリー・ロング 新井浩文 ジェミノイドF
村田牧子 村上虹郎 木引優子
ジェローム・キルシャー(特別出演) イレーヌ・ジャコブ(特別出演)
配給:ファントム・フィルム
2015年/112分/日本/カラー/DCP5.1ch © 2015「さようなら」製作委員会

公式HP:sayonara-movie.com

11月21日[土]より新宿武蔵野館、シネマジャック&ベティほか 
全国順次ロードショー

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!