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1001人のシリア人によるドキュメンタリー映画『シリア・モナムール』

2016.06.28 up
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現在東京、シアター・イメージフォーラムで公開中の『シリア・モナムール』。
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭2015で優秀賞を受賞したこの作品は、テレザとサニーという映画宣伝ユニットが初めて個人で配給に踏み出した作品でもある。

原題の「銀の水」とはクルド語「シマヴ」がフランス語に訳されたもので、それは共同監督のウィアーム・シマヴ・ベデルカーンの名前から。2011年カンヌ国際映画祭で政府軍に不当に拘束されている政治犯とされた人々の釈放を訴えて以来、フランス、パリに亡命中のオサーマ・モハンメド監督は戦火のシリアの外に身を置いて、伝えるべきシリアの人々を自らが伝えられないことの葛藤の中にいた。オサーマが選んだYouTubeでシリアの現状を伝える映像は、拷問、殺戮、目を覆いたくなる戦火の現実だ。シリア、ホムスでカメラを手に映像を撮っていたシマヴがFacebookを通じてコンタクトし、戦場に残る子どもたちの姿を映像としてオサーマと共有し始める。

ホムスは『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』(タラール・デルキ監督、2013)でも記憶に新しい、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動でシリア革命の首都と呼ばれるようになった都市。『シリア・モナムール』という邦題は作品の中で語られる悲しいエピソードの一つに登場するアラン・レネ監督の映画『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』(1959、脚本:マルグリット・デュラス)へのオマージュで、『ヒロシマ・モナムール』でわたしたちが異なる時間の、異なる風景、しかし、共有されるイメージ、思い、生きることへの態度が重なり合う瞬間のあることを目撃したように、パリで難民となったオサーマとホムスで銃撃戦に負傷しながらもカメラを回し続けるシマヴとの、シリアの未来を思って交わされた対話からシリアを目撃する物語となっている。

アルジェリアの女性作家アフラーム・モスタガーネミーのアラビア語小説『肉体の記憶』(1993年)を、シマヴは廃墟で見つけ読み始める。アルジェリアの独立革命について描かれた、パリに亡命した画家と祖国に囚われた女性の愛の物語。今年1月の『The Japan Times』「The ‘Silvered Water’ of ’Syria Amour’ by Kaori Shoji」(2016年1月15日付)によるオサーマ監督とのスカイプインタビューによれば、シマヴはフランスへ亡命するようにという数々の申し出を断り、現在はトルコ・シリア国境にある難民キャンプで暮らし、孤児を中心とした子どもたちのための学校づくりにホムスに引き続き、取り組んでいるということだ。

シマヴからのコンタクトにオサーマが「私は救われた」と返信し、ふたりの映像作家が物理的にも精神的にも離れたところから「共通言語」を見出し、ドキュメンタリー映画を産み落としたことは、戦火のシリアから、この世界に大きな希望のバトンが放たれたことを意味している。
シマヴが「いまもまだ、言葉には力があると思う?」とたずね、オサーマは「諦めずに書くんだ」と答えた。私もシマヴに伝えたい。あなたの言葉はここにも届いた、と。



『シリア・モナムール』

原題:EAU ARGENTEE, Syrie autoportrait
*山形国際ドキュメンタリー映画祭2015上映時タイトル:「銀の水―シリア・セルフポートレート」
2014年/シリア・フランス映画/96分/アラビア語
監督・脚本:オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン 
写真:ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン、1001人のシリアの人々、オサーマ・モハンメド
配給:テレザとサニー

公式ウェブサイト:http://www.syria-movie.com

6月18日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開 全国順次ロードショー



■トークイベント
6月30日(木) 13:00〜 三浦哲哉(映画批評家/青山学院大学文学部准教授)
7月2日(土) 13:00〜 青山弘之(アラブ地域研究者、東京外国語大学教授)
7月6日(水) 時間調整中 綿井健陽(映画監督『イラク チグリスに浮かぶ平和』)
7月7日(木) 15:00〜 伊藤俊治(美術評論家、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授)
7月8日(金) 13:00〜 高遠菜穂子(エイドワーカー、イラク支援ボランティア)
*詳細は公式ウェブサイトにてご確認ください。




『シリア・モナムール』 © 2014 – LES FILMS D’ICI – PROACTION FILM

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!