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ラグジュアリーなタワーマンションで体験するSF映画『ハイ・ライズ』

2016.08.13 up
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この夏、どんな映画を観ていますか?
テイラー・スウィフトの恋人として、また、次期ジェームズ・ボンドとの呼び声も高いトム・ヒドルストン主演で8月6日より大好評公開中の『ハイ・ライズ』で、1970年代のファッションに身を包んだ、ラグジュアリーなマンションライフでSF体験をしてみるのはいかがでしょう?

原作は科学技術が発達する中で、人々のライフスタイルや思考が大きく変化していく現代社会における人間の心理をとらえ、「SFは外宇宙ではなく、内宇宙を目指すべきだ」と語り、常に革新的で、実験的なSF小説を書き続けた、イギリスの巨匠J・G・バラード(1930-2009)の1975年の同名小説。

40階のペントハウスを最上階にして、棟内にレストラン、スーパーマーケット、プール、ジム、小学校まで備えているロンドン郊外にそびえ立つ憧れのタワーマンション。新生活を求めて入居した精神科医のラングは、夜な夜なハイ・ライズ(高層マンション)内で繰り広げられる隣人たちのパーティを楽しんでいる。40階にはこの実験的なタワーマンションを設計した建築家ロイヤル(ジェレミー・アイアンズ)を筆頭に上層階には富裕層が暮らし、中層階には実業家、専門職、技術者などラングらのミドルクラスが、そして低層階にはTVドキュメンタリー監督のワイルダー(ルーク・エヴァンス)らワーキングクラスというように、イギリスの階級社会が住居の高さに反映されている。
最新のテクノロジーによって完璧にみられたマンションのシステムが、ある夜起こった停電から住民たちの他の階層に対する日頃の不満を爆発させ、カオスに満ちた、プリミティブな争いを巻き起こす。

原作者バラードはもちろん、イギリスのEU離脱を知ることのないままこの世を去っている。にもかかわらず、東西冷戦真っ只中の1970年代にこのディストピアを描いた既視感こそ、まさにSF世界を構築するということなのだ、といった印象を受ける。興味深いことに、バラードは自身の半自伝的小説『太陽の帝国』(1984、スティーヴン・スピルバーグ監督により1987年映画化)でも描いているように、上海のイギリス租界で生まれ育ち、日本軍の捕虜収容所で過ごした少年時代に体験した、日米両国の戦闘機に見たテクノロジーへの憧れ、完璧な世界が一瞬にして瓦解していく様、その極限状態の人間の心理や欲望が彼のSF世界の原風景となっているという。

映画公開に合わせ、原作本(村上博基訳)も創元SF文庫より復刊!これを機に、本作を含むバラードの「テクノロジー三部作」『クラッシュ』(1973、デヴィッド・クローネンバーグ監督により1996年映画化)、『コンクリート・アイランド』(1974)にもぜひとも手を伸ばしてみたいところです。



『ハイ・ライズ』

監督:ベン・ウィートリー(『キル・リスト』『サイトシアーズ ~殺人者のための英国観光ガイド~』)
原作:「ハイ・ライズ」J・G・バラード(創元SF文庫)
出演:トム・ヒドルストン(『アベンジャーズ』)、ジェレミー・アイアンズ(『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』)、ルーク・エヴァンス(『ドラキュラZERO』)、シエナ・ミラー(『アメリカン・スナイパー』)
製作:ジェレミー・トーマス(『戦場のメリークリスマス』『クラッシュ』)
後援:ブリティッシュ・カウンシル 
2015年/イギリス/119分/DCP/5.1ch/シネスコ/原題:High-Rise 
日本語字幕:岩辺いずみ 
配給・宣伝:トランスフォーマー
© RPC HIGH-RISE LIMITED / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2015

公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/high-rise/

ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中



『ハイ・ライズ』 © RPC HIGH-RISE LIMITED / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2015

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!