CP -ONLINE REPORT MEDIA from TOKYO・CREATORS PARK- 東京・クリエイターズパーク

  • YouTube
  • facebook
  • twitter
  • RSS
TOP | NEWS

12/10公開『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』

2016.12.05 up
main1
       

昨年初め、ボタンエビの刺身の上にアリが乗っている一皿が日本のメディアをにぎわせた。2010年以来、世界一に4度輝き(英国ウィリアム・リード・ビジネス・メディア社により、2002年に設立されたレストランアワード「世界ベストレストラン50」)、世界中の美食家たちの注目を集めるデンマーク、コペンハーゲンのレストラン「ノーマ」が世界初の試みとして、マンダリン・オリエンタル・東京に期間限定で出店した、そのときのメニューの一品だ。「ノーマ」の中心的なシェフの一人ラース・ウィリアムズは「コースの1皿目に海老を出すことで客に衝撃を与えます。彼らの頭から心配事を追い出すんです。料理に没頭することができるように」と本作『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』の中で語る。

マケドニアからのイスラム系移民の父とデンマーク人の母を持ち、幼少の頃はマケドニアにある祖父の故郷の農家で育ったレネ・レゼピは、料理を科学することによって、食文化を新しい領域に高めたスペインの「エル・ブリ」などを経て、元共同経営者クラウス・マイヤーとともに2003年「ノーマ」をオープン。「ノーマ」とはデンマーク語「nordisk mad(北欧の食)」からの造語。レモンなど柑橘類の採れないデンマークでアリを食材としてその「蟻酸」を利用するなど、北欧圏内の地産地消にこだわり抜いたメニューは、『タイム』誌が「ノマノミクス」と呼ぶほどに、北欧の食文化に対する意識とその経済を急激に変化させている。2004年、マイヤーとレゼピのイニシアティブで北欧の12人のシェフによってまとめられた10項目のニュー・ノルディック・フード・マニフェストに基づいて、生産者から販売・卸業者、教育関係者、政治家をも巻き込んだムーヴメントによって、多くが廃れてしまった伝統的な食文化と新鮮な地元産の食材を北欧のランドスケープとともに現代の倫理観を持ってとらえ直すことで、北欧を新しい食の可能性を求める者たちが訪れる都市に様変わりさせたのだ。

レネをはじめ、世界中から「ノーマ」に集まったスタッフは若く、エネルギーに満ちていて、皆、私生活を置き去りにして、厨房を中心とした生活を送り、新しいメニュー、新しい食材、新しい技法に取り組んでいる。日々の「ランチやディナーが単調に感じていたので、とにかく新しい場所で仕事をすればまた楽しめるかなと」いうレネ。ホテル側からの誘致ではなく、ノーマからの企画の打診に唯一応じたのがマンダリン・オリエンタル・東京だった。そしてコペンハーゲンの本店を一時休業し、全スタッフ77名を引き連れて東京へやってきた。

「ARTS & SCIENCE」のオーナーであり、スタイリストのソニア・パーク氏が担当した器を彩ったのは、北海道から沖縄まで日本の海、山、森、畑をレネらが自らの足で訪ね、各地に根づいた扱い方を時間をかけて学ぶという「ノーマ」オープン時より培われた方法論でもって得られた逸品。ノーマの美学と哲学が日本の食材と出会い、生まれる世界とはどんなものか? 7万円近い高価なコース料理にかかわらず、世界各地からの予約は1日でいっぱいとなり、ウェイティングリストには6万2000人もが名を連ねた。営業期間は急遽2週間延長され、5週間で3,000人以上が日本限定の極上の14皿を味わった。

今春シドニーでのノーマ オーストラリアを経て、来春メキシコ、トゥルムでオープン予定のノーマ メキシコ(予約開始は12月6日より)は、本作にも登場していて、現在は独立して自らのタコス専門店「Hija de Sanchez」をコペンハーゲンに構えるメキシコ系アメリカ人ロシオ・サンチェスと彼女のチームも参加する。料理について学んでいるメキシコの学生に向けて、期間中ランチが体験できる招待プログラムやコペンハーゲンで「ノーマ」と「Hija de Sanchez」でインターンシップを体験できるスカラシップも発表された。ノーマ東京の食材探しに同行し、生産者や食材を紹介した、ミシュランの二ツ星レストランに選ばれた「レフェルヴェソンス」の生江史伸シェフによれば、ノーマ東京の期間中も生江シェフをはじめ、日本全国から同年代のシェフがキッチンのヘルプに集ったという。レネ・レゼピと世界中から集まった「ノーマ」スタッフたちは、食をめぐるランドスケープと文化の中にフロンティアの可能性を日々探求し続け、こうしてノーマのDNAが世界中を旅して交わり、広がり、私たちはそのメニューを通して、その知に触れることになる。



『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』

監督:モーリス・デッカーズ 
出演:レネ・レゼピ、ノーマのスタッフ ほか
2016年/オランダ/英語、日本語/カラー/16:9フルHD/5.1ch/92分/
原題:Ants on a Shrimp/翻訳:浅野倫子
配給:彩プロ 宣伝:サニー映画宣伝事務所、太秦 

公式サイト:http://www.nomatokyo.ayapro.ne.jp



12月10日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか 全国順次公開




『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』© 2015 BlazHoffski / Dahl TV. All Rights Reserved.

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!