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生きる上で手放したくないものは何ですか? 映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』

2017.01.25 up
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世界中の誰もが憧れる街でありつつも、だからこそ、そこで働き、暮らしたことのある人が口をそろえて「とてつもない競争社会」という現実を語る街、ニューヨーク。

本作『ホームレス ニューヨークと寝た男』の主人公マーク・レイは、そのスタイリッシュな身なりから見れば、誰の目にも極めて「decent」な人に映るだろう(この英単語は「まずまずの」給料とか、「ちゃんとした」格好などとして使われる)。もし、彼がストリートやファッションショーでフォトグラファーとして活動したり(『デイズド・アンド・コンフューズド』誌への掲載など)、映画のエキストラとして出演している現場以外の時間の彼の生活を知らなければ。人が人として生きていくために勝ち得てきた英知がトランプ新政権によって翻されていくアメリカと国際社会の新時代の幕開けに、この映画を観ながら「decent(人並み)」な暮らしを手にするとはどういうことだろう?と考えずにはいられない。強くなければ、私たちは「人並み」であることが難しいのだろうか?

本作が初の長編ドキュメンタリー映画となるオーストリア出身で、現在はニューヨークを拠点とするトーマス・ヴィルテンゾーン監督。ファッションモデル時代に同じくモデルをしていたマークとは20年以上前にウィーンで出会った。2010年にニューヨークで再会した時、「ブランドもののスーツを着こなし」ていた50代のマークは、監督の目にも「ニューヨークで成功した大金持ちに見えた」という。この作品のためにジャズのオリジナル・スコアを書き下ろしたカイル・イーストウッド(父で俳優・映画監督のクリント・イーストウッドの9作品でこれまで音楽を手掛けている)が「冬のNYなんて、とてもじゃないけど外で生活できないと思う」と映画を観ての感想を述べているように、実際のところ、一日の終わり、仕事を終えたマークは、6年近くもアパートメントの屋上で寝袋と尿瓶用のペットボトルで暮らしている。ジムのシャワーを利用し、そこでシャツにアイロンをかけ、必要最低限の荷物はジムのロッカーから出し入れしている。監督がそんなマークの秘密の生活に3年間密着し、このドキュメンタリーは製作された。

大学では経営を学び、就職した経験もある。ノマド生活を送りながらも、健康保険にはきちんと加入し、そしてニュージャージー州の実家で暮らす年老いた母へまだ親孝行ができていないことを悔いてもいる。マークは不法侵入者として通報されるリスクもある、この過酷な「ノマド」生活をなぜ送ることになったのだろう?確かに家賃のために働かなければならないというストレスからは解放されているけれど、生活費の高い街のコストの問題だけなのだろうか?彼は単に「情熱を追い求められる仕事をしたかった」という夢追い人というだけなのだろうか?この映画を観て、逆に彼が「人並みの暮らし」をあきらめてきた背景にあるものを、一緒に考えてみたいと思う。

もし、ヴィルテンゾーン監督と再会せず、マークの屋上生活が秘密のままだったら、そのままの生活が続いていたのではないだろうか。しかし、映画が公開されたことがきっかけで、現在57歳のマークはカウチサーフィンをしながらニューヨークでフォトグラファー、モデル、俳優の活動を継続しているそう。そこで、公開を記念して再来日するマークの日本での就職活動を行う後押しをしてくれるサポーターをクラウドファンディングにて絶賛募集中!!マークに会ってみたい方はぜひお見逃しなく。
クラウドファンディングページはこちら。
https://motion-gallery.net/projects/hommeless



映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』

監督:トーマス・ヴィルテンゾーン
出演:マーク・レイ
音楽:カイル・イーストウッド/マット・マクガイア
2014年/オーストリア、アメリカ/英語/ドキュメンタリー/83分
原題:HOMME LESS 字幕:大西公子
配給・宣伝:ミモザフィルムズ 宣伝協力:プレイタイム/サニー映画宣伝事務所
後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム 協力:BLUE NOTE TOKYO

オフィシャルサイト: www.homme-less.jp



2017年1月28日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!



© 2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved

POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!