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映画『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』

2017.02.09 up
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ジャンフランコ・ロージ監督の『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』で目にした風景を重ねながら、2015年3月、私はローマから鉄道で南部カラブリア州のラメツィア・テルメという街を訪れました。パブロ・ピカソの「ゲルニカ」と同サイズのキャンバスに、世界中の子どもたちがそれぞれの国や地域で、平和壁画を描くという「キッズ・ゲルニカ」と呼ばれるプロジェクトの展覧会とワークショップが開催されていたのです。地元の子どもたちが、ボートに乗る人々を描いていました。聞いてみると、それはアフリカなどからボートで渡ってくる難民で、海上で多くの人々がそのために命を落としている、その追悼の思いを込めてということでした。

ロージ監督の日本での劇場公開作品としては2本目となる本作『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』は、シチリア島をさらに超えた、ランペドゥーサ島とその沖合いが舞台となっています。北アフリカから最も近いヨーロッパの領土であるために、内戦や政情不安の続くアフリカや中東の国々から、人口約5500人のランペドゥーサ島にこの20年間で約50万人の難民が上陸し、これまでに推定で27000人もの人が海で亡くなっているということです。
先月、立教大学文学部文学科文芸・思想専修主催で公開講演会「ジャンフランコ・ロージ監督、学生とともに移民・難民問題を語る」が開催されました。長 有紀枝氏(立教大学社会学部・21 世紀社会デザイン研究科教授、特定非営利活動法人 難民を助ける会 理事長)とともにパネラーとして、難民についてのドキュメンタリー制作や日本での難民支援、啓発する活動をそれぞれ行なっている川口 航さん、渡部清花さん、久保田 徹さんの3名の学生が参加しました。

自身もエリトリア独立戦争中の少年時代にイタリアへ渡っているロージ監督が国際映画祭で上映する10分の短編を撮るために初めてこの島を訪れたのは2014年の秋。本作で重要な人物の一人、「この島でただ一人の医師であり、この20年間、救助された移民・難民の上陸にすべて立ち会ってきた」ピエトロ・バルトロ医師に出会いました。そして、ロージ監督はこの島に移り住み、一年半の間滞在し、この島の人々の暮らしを通して、この難民の問題をとらえようとします。その中で監督は漁師一家の中で日々成長する少年サムエレと出会います。ロージ監督がサムエレの世界を移民・難民の世界を考える上での「メタファー」と言うように、私たち観客もサムエレの体験を通して、例えば、海に慣れない人間にとって、船に乗ることがどれだけ難しく、不安で大変なことかを改めて理解することになるでしょう。

2013年には沖合いで、密航船の火災・転覆事故が発生し、360名以上が犠牲になり、世界中で報道されました。以来、イタリア海軍は「我らの海」と呼ばれる難民救助作戦を開始し、1年間で15万人以上救出しましたが、2014年10月に打ち切られ、その後はEUによる「トリトン作戦」などに切り替えられています。これらの海上救助作戦により、移民・難民は上陸後、そのまま抑留センターに輸送され、3日後には本島のより大きなセンターへ移送されるため、「人を救うのは人間の務め」と語るバルトロ医師以外の島民とは接する機会はないのだそうです。
シンポジウムの中で、学生の川口さんから難民よりも島民の生活の方がフォーカスされていたのではないか?という質問がありました。ロージ監督によれば、法律により難民たちは島の抑留センターには3日以上は滞在できず、深い関係性は築けないということがありました。しかし、監督は「10万ものインタビューをくり返すより、10万時間カメラをまわすより」、本作の中で「3分間のナイジェリアからの人々のラップがすべてを語っている」のだと強調します。これは本当にパワフルなもので、彼らの過酷な体験、目撃してきた悲劇を物語っています。
会場からは船による救助作戦の船員たちについての質問もありました。ロージ監督によれば、イタリア海軍には助けを求められていたら、絶対に助けるという使命があると言います。そのイタリア海軍の救助艇に監督は 20日間の乗船を2回許可してもらっています。監督自身、酔い止めを飲みながら、船員たちとの強い絆を育み、救助作戦の最前線を体験したそうです。船員たちの強力なサポートと船長からの「世界に知らせる義務がある」という言葉に背中を押され、過酷な状況下をも撮影することが可能になったということでした。

2016年、ベルリン国際映画祭にて金熊賞を受賞した際には、バルトロ医師も映画祭に参加し、賞は一年半を共に過ごしたランペドゥーサ島の人々に捧げられました。本作の冒頭、地中海を彷徨うボートから携帯電話を通じて届くSOSの声に対し、海上警備隊が応えます。「現在地はどこですか?」と。シンポジウムの始まりに監督は「これは観客への問いかけでもある」と私たちに語りました。難民に対しての「あなたのポジションは?」と。

この映画を観る私たちは、今、何を思うでしょうか。



『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』

監督:ジャンフランコ・ロージ 
原題:FUOCOAMMARE
2016年/イタリア=フランス/114分
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館 
協力:国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所
推薦:カトリック中央協議会広報
配給:ビターズ・エンド 

公式サイト: http://www.bitters.co.jp/umi/

2017年2月11日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!


©21Unoproductions_Stemalentertainement_LesFilmsdIci_ArteFranceCinéma
POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!