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インディペンデントなジャーナリズムの時代に『抗い 記録作家 林えいだい』

2017.02.17 up
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福岡県筑豊を拠点に、がんと闘い、握ることの難しくなったペンをセロテープで指に巻き付け、執筆を続ける83才の記録作家 林えいだいさん。歴史や社会の教科書だけではわからない、地図にも記されていない、名もなき人々の存在を、その苦しみを丹念に取材し、記録してきた人である。

筑豊と言えば、炭鉱の街。労働力は朝鮮半島からの強制連行に多くを依存していた。戦時中のある日、炭鉱から脱走してきた朝鮮人労働者を、神社の神主である父親は通報せずに保護をした。国家権力に抵抗した父親は、警察の拷問を受けて12歳の時に亡くなった。苦学の末に、荒畑寒村著『谷中村滅亡史』を読み、足尾銅山鉱毒事件をめぐって国と闘った住民と田中正造に強く感銘を受け、大学を中退。故郷の炭鉱などで働き、やがて地方公務員として勤める傍ら、地域の婦人会と北九州市の公害問題に取り組み、『これが公害だ!子供に残す遺産は何か』という写真集を自費出版。37歳で退職し、国家と産業が一体となって、棄民を行なってきた歴史を紐解くため、足尾銅山へ取材に向かう。以来、記録作家としての人生が始まった。本作では、最新刊 『実録証言 大刀洗さくら弾機事件朝鮮人特攻隊員処刑の闇』(新評論)として出版された、福岡にあった大刀洗飛行場で出撃前夜に放火されたという特攻機「さくら弾機」の事件について、終戦間際に処刑された朝鮮人特攻隊員と関わりのあった人々も登場し、当時の様子を証言している。林えいだいさんは冤罪事件ではないかと、日本人の差別意識を明らかにしようとする。

本作を観て、もう少し、林えいだいというインディペンデントの記録作家について知りたくなり、『地図にないアリラン峠 強制連行の足跡をたどる旅』(明石書店、1994年)を読んでみる。戦前、戦中と朝鮮半島から徴用されて強制労働をさせられていた人々のたどった道筋に、原子力発電所や沖縄の米軍基地、自衛隊派遣の問題から、外国人研修生やブラックな労働環境に至るまで、現代社会の多くの問題もまさに、人間性を無視した国家と産業の関係という意味で連なっていることを強く実感させられる。



『抗い ARAGAI  記録作家 林えいだい』

出演: 林えいだい
朗読: 田中泯
プロデューサー: 川井田博幸 倉富清文 協力プロデューサー: 増永研一
音楽: Viento
制作協力: 東田シネマ
宣伝協力: スリーピン
制作・配給: グループ現代 
製作・著作: RKB毎日放送
監督: 西嶋真司
2016年/カラー/100分/ドキュメンタリー/日本語

公式サイト: http://aragai-info.net/

2017年2月11日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー!


『抗い  記録作家・林えいだい』
POSTED BY
Junko HONMA
Junko HONMA / Movie Journalist
「クリエイターとのダイアローグからそのさきへ。そんな“場”をつくっていけたら。」
2012年より映画の上映会や配信の運営、PR、TVドキュメンタリーの制作の現場を経て、“ことばで伝える”ことに立ち返り、表現を取り巻く状況が大きく変わりゆく時代の中で国内外で“領域”を越えて、新たな取り組みに挑戦しつづけるクリエイターのいまをお伝えします。本サイト「theatre tokyo/ creators park スペシャルインタビュー」ほか、ウェブマガジン『HYPEBEAST.JP』ではライフスタイル、カルチャーの翻訳を担当中。大阪の制作、エキストラで初参加させていただいた、リム・カーワイ監督作品『Fly Me to Minami~恋するミナミ~』DVD/iTunes配信も絶賛発売中!!